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令和4年度税制改正の大綱に、企業経営にかかわる経済産業関係の「成長と分配の好循環の実現に向けた税制措置」が盛り込まれています。どのような内容なのかみていきましょう。
日本経済の景気低迷が続いており、その要因の一つとして挙げられているのが、日本の賃金水準が20~30年ともいわれる長期間、横ばいのまま推移していることです。
GDP(国内総生産)の半分以上を占めるのが個人消費ですから、賃金が上がらなければ個人消費の回復につながらないことは、経済の専門家ではなくても肌で実感できることでしょう。
その一方で、企業の内部留保は9年連続で過去最高を更新しています。そこで政府が打ち出したのが「成長と分配の好循環」です。企業が上げた利益を賃金に還元することで、個人消費を伸ばし、景気回復につなげていこうという構図です。
企業が上げた利益が賃金というかたちで従業員に適正に分配する構図が出来上がれば、企業の成長にもつながるため、賃金引き上げが欠かせません。その企業の賃上げを促進する目的で税制改正大綱に盛り込まれたのが、「賃上げ促進税制」です。
その中身は、資本金1億円超の大企業には「継続雇用者の給与を前年度比で3%以上増加させた場合に給与増加額の15%を税額控除(同4%以上かつ教育訓練費20%以上増加で最大30%の税額控除など)」する優遇策で、賃上げを促します。
中小企業については、雇用者全体の給与を前年度比2.5%以上増加させた企業に「給与増加額の30%を税額控除(かつ、教育訓練費10%以上増加で最大40%の税額控除など)」できるようにするなど、賃上げ税制を抜本的に強化していく方針です。
さらにオープンイノベーション促進税制についても、要件を満たした企業には対象企業の拡充と制度の延長も盛り込まれています。その背景にあるのは、スタートアップ企業が大企業などとの連携・協業(オープンイノベーション)する重要性が一層高まっているからです。
また、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けて、5G税制の税額控除率を最大15%から階段状にすることで、今後3年間での集中的な整備を促進するとともに、3年間の延長も盛り込まれています。
こうした税制措置によって、「成長と分配の好循環」の実現を目指す構えです。しかし、この優遇税制が、本当に賃上げに結びついていくかどうかは、まだまだ様子をみる必要があります。
いくら賃上げを実施する企業に税制面で優遇するといっても、日本企業の半分以上は赤字経営です。つまり、税制優遇措置の効果そのものが「限定的」という指摘もあります。
しかも、経営規模の小さな中小企業にいたっては、賃上げどころか生き残るだけで精一杯という、ギリギリの経営状態に追い込まれている企業も少なくありません。ましてやコロナ禍の影響が、経営状態をさらに混迷させているという現実もあります。
賃上げを実施できる企業への優遇税制だけでなく、赤字経営にあえぐ中小零細企業への対策も、求められることになるのではないでしょうか。
日本企業が、人的資本への投資よりも内部留保にカジを切ったことが、国際競争力の低下を招いたという指摘もあります。賃金を上げること、それはすなわち「人への投資」です。税制面の改革にとどまらず、日本の産業構造を根本的に見直す時期にきているのではないでしょうか。
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