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ジョブ型雇用制度を導入する動きが、日本の大手企業に拡大しつつありますが、これまでの日本型のメンバーシップ雇用とは対極に位置する雇用形態です。人事評価の透明性などの課題も指摘されています。ジョブ型への意向を表明したNEC・日立・富士通の採用計画から、ジョブ型雇用が定着していくのかどうかを見ていきましょう。
NECが発表した新卒採用計画によると、2023年度に全社員を対象にジョブ型人材マネジメントの導入を図り、適時・適所・適材に社員を配属することで、多様な人材が活躍できる企業への変革に取り組むという方針を示しています。
また、「2025中期経営計画」には、2025年度に女性・外国人役員比率を20%、女性管理職の比率も20%にすることが盛り込まれているのです。イノベーションの源泉となるダイバーシティを加速させていこうという強い意志が感じられます。
この新卒採用計画を踏まえ、2022年度のキャリア採用と2023年度の新卒採用の比率を1対1とし、600人を採用する予定です。
日立製作所は、2021年度は技術系職種を中心に「ジョブ型インターンシップ」を実施しました。しかし、2022年度は、技術系に限らず、営業や人事、財務、法務などにも拡大、さらに、2023年度の「新卒(ファーストキャリア人財)採用計画」では、新卒採用するすべての職種で実施する方針を、3月22日に発表しています。
採用人数も前年度よりも経験者100人を増加する予定で、合計で1,150人を採用する計画です。内訳は大学・大学院・高専卒業予定者600名、高校卒業予定者50名、経験者500名となっています。
日立製作所では、各職種(各ジョブ)の代表社員を“ジョブリクルータ”と命名し、社員自らが各ジョブの魅力をPRする、「ジョブリクルータ制度」を導入します。これまでの採用活動で中心的役割をはたしてきたのは、人事部や大学のOB、OGですが、これからは社員が中心となって採用活動を展開していくという方針です。
富士通の新卒採用は、大学・大学院の最終学年の学生と既卒者を対象に、年間を通じて応募を受け付ける通年採用を実施する方針で、2023年度の新卒採用は750人程度で、キャリアの採用数は定めていませんが、2021年度の計画数300人以上を拡大するとしています。
また、中長期的な人材戦略として「ジョブ型人材マネジメント」「DX(デジタルトランスフォーメーション)人材への進化」「組織変革に向けた取り組み」を掲げ、人材採用をグローバル展開していく方針が示されました。
人材採用のグローバル展開には、グローバル基準の給与体系が求められますが、これまでの勤務年数や職歴に合わせた職能ベースから、職責や専門性の高さに応じた報酬体系の変更にも取り組むことが示されました。
HR総研の実施した「2023年新卒採用でのジョブ型(職種別)採用の導入意向」によると、ジョブ型を導入するのは大企業が26%で、中堅企業で21%、中小企業では13%と、企業規模による違いもあり、全体では19%と2割には届いていません。
しかし、誰もが名前を知っているような日本の代表的な企業が、このところジョブ型雇用導入を加速させているのは、コロナ禍で急増した在宅勤務の影響もありますが、一番の大きな理由は、日本型雇用が曲がり角にきていることです。
日本型雇用は、年功序列型賃金と退職金によって、社員を囲い込むことで企業の成長を支えてきました。つまり、社員は、長く勤めれば勤めるほど給料が上がり、退職金も多くなるというわけです。
しかし、その雇用形態を維持できるのは、右肩上がりの経済成長があってのこと。現在のような低成長、ましてや希望する社員には、70歳まで就労支援することが企業に求められる時代となり、年功序列で賃金が上がる給与体系維持が難しくなりつつあります。
ジョブ型であれ、メンバーシップ型であれ、肝心なのは社員のモチベーションを維持できるかどうかです。そのために重要なのが公平・公正な正当な人事評価です。日本に、欧米型のジョブ型雇用が定着するかどうかは、社員が納得できる人事評価制度を整備することができるかが、大きなカギとなるのではないでしょうか。
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