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近年ライフスタイルが多様化するなかで、自由度の高い働き方が求められています。
このような背景から注目されているのが、裁量労働制です。
しかしながら、この制度はすべての職種に適応されるものではありません。
今回は、裁量労働制に関してわかりやすく解説をしていきます。ほかの制度との違いや、裁量労働制のメリット・デメリットについても詳しく見ていきましょう。
裁量労働制とは、労働基準法によって定められた「みなし労働時間制」の一つです。
これは、あらかじめ定めた時間数を働いたものとみなす制度で、実労働時間は従業員の裁量にゆだねられています。
例えば1日8時間をみなし労働時間とした場合、実際に稼働したのが5時間でも12時間でも、8時間分の対価が報酬として反映されます。
一般的には、実労働時間は1日8時間、1週間40時間という原則が定められています(労働基準法第32条)。雇用者は従業員を既定の労働時間を超えて働かせることはできません。
もし時間外労働をしてもらう場合は、36協定という時間外労働協定を結ぶ必要があります。
労働者側には働く時間や出勤・退勤時間の自由度が高くなる一方で、裁量労働制には時間外労働という概念がありません。実労働時間がみなし労働時間を超えたとしても、残業代は発生しないのが特徴です。
企業が裁量労働制を導入するためには、使用者と労働者との間で労使協定を書面で締結して、労働基準監督署に届け出る必要があります。
しかし裁量労働制は、すべての職種に適応されるわけではありません。「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」という2つの制度で、具体的に職種が定められています。
「専門業務型裁量労働制」では、「業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務」が対象です。
(引用:専門業務型裁量労働制|厚生労働省
/news/detail/3381/?url=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fgeneral%2Fseido%2Froudou%2Fsenmon%2Findex.html)
具体的には、以下の19業種が定められています。
・新商品、新技術の研究開発
・情報処理システムの分析・設計
・記事の取材・編集の業務デザイナー
・放送番組、映画等のプロデューサー、ディレクター
・コピーライター
・システムコンサルタント
・インテリアコーディネーター
・ゲーム用ソフトウエアの創作
・証券アナリスト
・金融商品の開発
・公認会計士
・弁護士
・建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)
・不動産鑑定士
・弁理士
・税理士
・中小企業診断士
・19大学での教授研究
「企画業務型裁量労働制」は、「企業等の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務の遂行方法等に関し使用者が具体的な指示をしないこととするもの」が対象です。
(引用:企画業務型裁量労働制|厚生労働省
/news/detail/3381/?url=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fgeneral%2Fseido%2Froudou%2Fkikaku%2Findex.html)
経営や人事、広報、財務、営業などの部門において、企業の中核を担う企画立案、計画策定をする業務が対象となります。
なお「企画業務型裁量労働制」は、労使委員会を設置して、5分の4以上の多数決を決議しなければなりません。「専門業務型裁量労働制」に比べると、ほかにも厳格な要件や届出、報告義務が定められています。
裁量労働制に似ている制度として、フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制があります。
フレックスタイム制は、1日の労働時間においてフレキシブルタイムとコアタイムを設けた制度です。フレキシブルタイムでは、出社・退勤時間を従業員が自由に選ぶことができます。
一方で、コアタイムは必ず実働しなければならない時間帯です。例えばコアタイムを、11時~15時に設定したとします。従業員は11時までなら何時でも出社しても構いませんし、15時以降も終業時間は自由です。しかし1日8時間は働かなければなりません。
またコアタイムは必ず設ける必要はなく、すべてフレキシブルタイムで働くことができます。裁量労働制と違って、残業代が発生することもフレックスタイム制の特徴です。
事業場外みなし労働時間制は、会社以外で仕事をした際、所定の時間を労働したとみなす制度です。テレワークや在宅勤務、または直行直帰の営業やサービス業、打ち合わせが該当します。職種による制限はなく、使用者の指揮監督が及ばない業務が対象となります。
最後に裁量労働制のメリットとデメリットについて解説します。
まずメリットから見ていきましょう。従業員は労働時間を短縮するために、仕事の処理能力を上げることが期待できます。かつ高いパフォーマンスを発揮することにもつながります。またライフスタイルに応じて、柔軟な働き方ができることも魅力です。
このことで企業側も恩恵を受けられます。社員がよい成果をもたらすことで、会社の業績や業務の生産性が向上すると考えられます。さらに人件費の予測や管理がしやすくなることもメリットです。
一方で、時間外労働が常態化した場合、従業員にとっては大きなデメリットとなります。過労やストレスが溜まるだけではなく、残業代も支給されないため、仕事のパフォーマンスやモチベーションが低下する恐れがあります。
これは企業側にとってもデメリットとなります。過剰な時間外労働は、深刻な社会問題にもなっていますが、裁量労働制で残業の多い職場は注意を払わなければなりません。場合によっては、労働基準監督署に報告・相談をすることも頭に入れておきましょう。
裁量労働制はよい変化が期待できる一方で、企業によってはマイナスに働きます。導入するかどうかは、経営の実態に合わせて検討をする必要があります。
今回は、裁量労働制について解説をしました。すべての職種に適応できるわけではありませんが、今までの働き方を大きく変えてくれる制度です。
今後も働き方は、さらに多様化していくことでしょう。そのなかで裁量労働制は、従業員が仕事の効率化をはかり、企業にも恩恵をもたらす制度として期待できます。
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