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法務・広告担当者でなくても知っておきたい、広告表示に対する「措置命令」

公開日2019/11/06 更新日2019/11/07
措置命令とは?どういう対応が必要になるの?

街頭ディスプレイ、POP、ウェブサイトなどあらゆる媒体に広告が溢れています。一方でその広告に対して消費者庁から「措置命令」を受ける企業が後を絶ちません。消費者意識が高まる中、措置命令を受けた企業は社会的信頼性を失墜させ、消費者離れを招くリスクがあります。企業はどうすれば広告活動リスクを防げるのでしょうか。

措置命令とは

措置命令とは、消費者庁が「景品表示法」違反の疑いがあるとして調査をした結果、違反行為を行っていると認定した企業に対し、その違反行為の差し止め、再発防止などを命じる行政処分のことです。措置命令に従わなかった場合は、刑事罰を科されるおそれがあります。

元来は公正取引委員会が「排除命令」として行っていた行政処分でしたが、2009年9月の消費者庁発足により景品表示法の所管が公正取引委員会から消費者庁に移管され、それにと伴い行政処分の名称が「措置命令」と変更されました。

商品(製品やサービス)の広告活動においては、景品表示法(「不当景品類及び不当表示防止法」)による規制を受けます。

景品表示法は「消費者を惑わせたり誤認させるような内容の広告を規制することにより、消費者の利益を守る」ために制定された法律で、次のような広告が規制対象になります。

●不当景品類

消費者の購入意欲を煽るため、例えば家電製品を買った消費者に特典として無償提供する付帯製品や割引券です。販売予定総額の2%を超える景品や、販売価格に関わらず30万円を超える景品などがこれに該当します。

●不当表示

誇大表示、客観的事実や科学的根拠のない表示など、消費者の合理的判断を誤らせる広告表示のことです。次の3種類に分かれています。

<優良誤認表示>

1.商品の品質、規格、製法などが合理的根拠もなく優良であると消費者に誤認させる表示

2.商品の品質、規格、製法などが合理的根拠もなく競合他社の商品より優良であると消費者に誤認させる表示

例えば、実際はカシミア混合率が50%なのに「カシミア100%」を謳った表示、 実際は競合他社も採用している技術なのに「当社だけの技術」と謳った表示などです。

<有利誤認表示>

1.商品の価格や取引条件が実際よりも有利であると消費者に誤認させる表示

2.商品の価格や取引条件が競合他社のそれよりも有利であると消費者に誤認させる表示

例えば、実際の製品保証期間は3年間なのに「業界唯一の安心保証5年」と謳った表示、「安さ地域一番」と謳っているが、実際は価格調査をしていない根拠のない価格、実際は普段から5000円で販売している製品なのに「通常価格1万円のところ特別価格5000円で提供」と謳った表示などです。

<その他誤認されるおそれのある表示>

消費者に誤認されるおそれがある場合、次の表示を内閣総理大臣が不当表示に指定できます。

1.無果汁の清涼飲料水等

2.原産国

3.消費者信用の融資費用

4.不動産のおとり広告

5.不動産以外の商品のおとり広告

6.有料老人ホームの施設・設備・サービス

措置命令の事例

消費者庁の『平成30年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組』によると、

1.平成30年度における調査件数は591件

2.同年度における処理件数は、措置命令が46件、課徴金納付命令が20件、指導が216件、都道府県による処理が適当として都道府県に移送したものが76件、公正競争規約により処理することが適当として公正取引協議会等に移送したものが9件の合計379件

――などとなっています。

このうち措置命令においては次のような事例が見られます。

●ソファカバーの不当表示

良品計画はソファカバー159点の販売に当たり、商品タグに「撥水加工を施しました」と記載していたが、実際はいずれのカバーも撥水加工が施されていなかった。

●香辛料の原材料の不当表示

農事組合法人石垣島海のもの山のもの生産組合は香辛料4点の販売に当たり、自社運営のウェブサイトにおいていずれの原材料も石垣島産との表示をしていたが、実際はいずれの原材料も大半が外国産だった。

●料理の食材の不当表示

エー・ピーカンパニーはチェーン店の「宮崎県日南市塚田農場」、「宮崎県日向市塚田農場」、「鹿児島県霧島市塚田農場」の3店で提供する「チキン南蛮」・「月見つくね」・「塩つくね」において、メニュー表に「地鶏一筋」と記載された印影を掲載し、あたかもこれらのメニューには地鶏を使用していると誤認させる表示をしていたが、実際はいずれもブロイラーを使用していた。

●黒ビール使用の不当表示

キリンシティは自社レストランで提供する25点のメニューにおいて、メニュー表に例えば「新一番搾りスタウト(黒生)を使用し、さらにコク深く、スパイシーな味わいに生まれ変わった黒ビールカリー」と記載するなど、あたかもスパイスに黒ビールを使用していると誤認させる表示をしていたが、実際は黒ビールを使用していなかった。

●葬儀サービス料の不当表示

ユニクエストは自社の葬儀サービス提供において、自社運営のウェブサイトで「追加料金一切不要の安心価格 プラン金額がお葬式にかかる全ての費用です」などと広告していたが、実際は霊柩車の搬送距離が50㎞超の場合は追加料金が発生するサービスだった。

この他、日本マクドナルドのローストビーフ不当表示、TSUTAYAの動画配信サービス料金不当表示など措置命令事案は企業規模の大小、有名企業・無名企業、業種業態の別を問わず、様々なケースで発生しています。その原因の大半が景品表示法に関する広告担当者の知識不足や情報確認不行き届きと見られています。

措置命令をされた後の対応

消費者庁は景品表示法違反の疑いがある広告活動を探知すると、一般に次の手続きを経て措置命令処分を行うとされています。

・当該広告活動に関する資料収集、事業者への事情聴取などの調査を実施

・調査の結果、違反行為が認められると事業者に弁明の機会を付与した上で、違反行為の差し止めなど必要に応じた措置命令処分を実施

そして、消費者庁から措置命令処分を受けた企業は、例えば、

・景品表示法に違反した事実を一般消費者に周知する

・違反再発防止策を講ずる

など、措置命令に示された内部統制を速やかに実施しなければなりません。

いうまでもなく、自社の広告活動において企業は消費者庁から措置命令処分を行われる前に、景品表示法違反行為を起こさない仕組みづくりが重要です。

このため、消費者庁は「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の中で、企業に次の7項目の内部統制を求めています。

1.景品表示法の社内周知・啓発

2.景品表示法遵守方針の明確化

3.自社商品の広告表示等に関する情報確認徹底

4.自社商品の広告表示等に関する情報の社内共有

5.自社商品の広告表示等を管理する担当者等の任命

6.自社商品の広告表示等の根拠となる情報を事後に確認するための体制整備

7.自社商品広告の不当表示等が明らかになった場合、迅速かつ適切に対応ができる体制整備

まとめ

企業は広告において、ともすれば同業他社との差別化や印象づけを図るため、意図せぬ景品表示法違反を犯しがちです。しかし、広告担当者の「知らなかった」が通用しないのが法律です。このため、広告担当者は景品表示法に対する正しい知識を身に着けると共に、自社商品の広告活動においては商品開発・製造部門に正しい情報提供を求め、客観的な事実や科学的根拠に基づいた広告活動の展開が不可欠です。

その努力が自社の社会的信頼性失墜と法的リスクを防ぐ唯一の道といえます。

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